それは、唐突だった。
ただし、「私、和泉にとっては」と注釈がつく。
4月2日から、バイト先で人が増えた。
後輩もできた。
後輩君からの一言でスタートしたらしい。
「和泉さんっていつもスーツですね」
いつもと言われても、
君に会ったのはほんの2回しかないわけだが、
いつもと断定できた要因を小一時間ほど聞いてみたい気もするが、
少しおとなになった和泉(当社比)はそんな反応はしないのだ。
「まあ、就活中だからねぇ」
「普段、どんな服を着ているんですか?」
「どんなって言われても……ユニクロ?」
たわいのない会話。じつにたわいのない会話だが。
ちなみに、「パジャマ用のスーツ持ってますよー」と言ったら、
信じてもらえたエピソードがある。
ちなみに、スーツ未着用で出かけたオフ会で、
挨拶してから数分「和泉涼」だと認識してもらえなかったこともある。
さて、ここで、ひそかに心のどこかに闘志を感じた人がいたらしい。
私の席の向かいに座るHさん(女性)である。
「服を買いに行こう!!」
「えーっと、誰のですか?」
「むろん君の!!」
「えーっと、財源は?」
「むろん君だ!!」
「何を買うんですか?」
「服だよ! おしゃれな!」
「ユニクロではだめですか?」
「ダメです、せめてライトオンぐらいは!」
「ちなみに予算はいくらなんです?」
「15000円+3000円で!」
「なんです、その3000円?」
「コーディネーターとしてランチをご馳走になりたいと思います」
「ああ、人のお金で主体的に買い物するってステキ……」
Hさんの名言である。
たしかに素敵だろう。
問題なのは、主体的でなくお金を払うほうになりそうな私である。
まあ、心配?してくれているっぽいし、
なんだか楽しそうな雰囲気でもあるので、
会話はそのまま、Tさん(女性)を巻き込んで続く。
「じゃあ、アレだ。
ここで劇的ビフォア・アフターで心をわしづかみに!!」
……誰の?
「彼女さんですよ!!
そうですね、写真をとって
掲示板(バイト先関係者専用のものがある)にも載せましょう!!」
あぁ、このノリはどっかであったなぁ。
高校時代がこんな感じだったかなぁ。
続く、かもしれない。